最近、ゆったりとコーヒーを淹れる時間が好きになりました。これは私としては大きな転換点で、元々はコーヒーを淹れるのが面倒で全自動コーヒーマシンを買って使っていたこともありました。それすら面倒になり、一時期は全くコーヒーを飲んでいませんでした。しかし、今はコーヒーを飲むためのプロセスとして淹れているというよりも、コーヒーを淹れる時間そのものが楽しみになりつつあります。
ペーパードリップの例
そもそも、ペーパードリップとは何かをおさらいします。ペーパードリップとは、まずドリッパーと呼ばれる底に穴の空いた容器に紙のフィルターをセットし、そのフィルターにコーヒー粉を入れ、次に何度かに分けてお湯を注ぐことでコーヒーを抽出する手法です。
以前にペーパードリップを試した時は、何もかもうまくいかず時間ばかりがかかってイライラしてしまい、諦めてしまいました。何をどうすればいいかググりながら時間をかけて頑張っても、変な酸味や雑味付きの黒いお湯が出てくるだけでした。
しかし、ある時ふと思い立って、まず十分な機能を持った道具を一式揃えた上で、後述する 4:6 メソッドと呼ばれる手法をベースに計測と改善を行うようにした結果、工程を楽しみながら美味しいコーヒーが飲めるようになりました。
この記事では、ペーパードリップがうまくできずに悩みを抱える方や、ペーパードリップを試してみたい方に向けて、私が個人的におすすめしたい道具とペーパードリップの計測・改善方法を紹介します。
以下のような読者を想定しています。
まず、ペーパードリップの方法と必要な道具をおさらいしましょう。
UCC 公式サイト にてより丁寧に解説されているため、詳しく知りたい方はそちらをご覧下さい。
必須の道具たち
ペーパードリップをするにあたって、以下の道具が必須です。
これらを使ったペーパードリップの方法は次の通りです。
既に述べたペーパードリップに必須の道具に加え、以下の道具があると良いでしょう。
あると嬉しい道具たち
以下の道具があると便利です。
そして、計測と改善を行いたい場合、以下の道具が必要です。
ペーパードリップにおいて、私が最初に戸惑ったのはお湯の注ぎ方でした。どのぐらいの温度のお湯を、どのぐらいの量で、どのぐらいの時間間隔で注げば良いのか非常に悩みました。
これについては、あらゆるブログや書籍や動画において各々の見解が語られています。しかし、それぞれ食い違う意見も少なくないため、これらの断片的な情報を初心者が理解して体系化して実践することは難しいと感じました。
ただ、多くの情報源で共通して述べられていることは以下の通りでした。
しかし、これだけでは「じゃあ実際にどう注げばいいんだろう」という疑問が解消されません。
そこで、私は「初心者でも安定して淹れることができる方法」として下記ブログなどで紹介されている 4:6 メソッド を試すことにしました。4:6 メソッドはオールラウンダーな抽出法で、固定されているパラメータと好みによって変動させるパラメータがはっきりと分かれているため、味の再現性を保ちながらも自分の好みにカスタマイズすることがとても容易です。
ハリオ公式の下記動画がとても分かりやすいので、下記も合わせてご覧ください。
4:6 メソッドでは、粗挽きのコーヒー粉の 3 倍の重量のお湯を 5 回に渡って注ぎます。例えば、20g のコーヒー粉を使って淹れる場合、60g のお湯を 5 回に分けて淹れていきます。
そして、注ぐお湯のうち、前半の 40% の湯量では甘さと酸味のバランスを調整し、後半の 60% の湯量で濃度を調整します。 この前半と後半の 4:6 の割合からこの手法は「4:6 メソッド」と命名されています。前半・後半それぞれにおいてどのように調整を行えばよいのか見ていきます。
まず、前半の二投について考えます。先程「ドリップの工程では最初に酸味が抽出され、次に苦味、最後に渋味が抽出される」と述べた通り、一投目を多く注げば酸味が、二投目を多く注げば甘みが増します。例えば、一投目 80 ml、二投目 40 ml とするとかなり酸味が強くなります。
次に、後半の三投について考えます。この工程に突入するタイミングでは酸味の抽出は既に終わっており、どれぐらい濃くするかをコントロールする工程になります。濃いめに淹れたい場合は一投分の量を減らしつつ回数を増やし、薄めに淹れたい場合は一投分の量を増やしつつ回数を減らします。例えば、30 秒間隔で 45 ml ずつ 4 回投下すれば濃くなりますし、1 分間隔で 90 ml ずつ 2 回投下すれば薄くなります。
しかし、これらを自分で計算するのは面倒ですよね。そこで、Arakun さんが作成された「4:6メソッド抽出モデル作成器」が便利です。
「4:6メソッド抽出モデル作成器」は、コーヒー豆の量、お湯の量、好みの味、好みの濃さを入力するだけで、よしなに抽出モデルを作成してくれます。例えば、「20g・300ml・甘め・濃いめ」の場合は以下のような出力結果になります。
4:6メソッド抽出モデル作成器「20g・300ml・甘め・濃いめ」の場合
初心者である私は、最初は 4:6 メソッドにそのまま従いながら、少しずつパラメータを変動させて自分好みにカスタマイズすることで、自分が好きなコーヒーの淹れ方を少し掴むことができました。
次章では、それらの計測と改善を行うために便利な道具を紹介します。
読者の皆様もご存知の通り、あらゆる改善は計測から始まります。適切に現状を理解しなければ、改善を行うことができません。そして、計測を行うためには、迅速かつ正確に情報を得られる必要があります。
再現性を高めるためには、お湯の温度がぶれない方が望ましいでしょう。 また、温度を調整することで自分の好みに向けて改善することも可能です。
そこで、温度計はある程度精度が高く、かつ素早く反応するものを使うと良さそうです。 タニタのデジタル温度計 TT-508N は、0.5 秒毎に更新されるし、だいたいお湯に突っ込んで 15 秒ぐらいで温度を表示してくれます。 ただし、50-250 度に対応しているものの、プラスチック部分は耐熱ではないため、あまり高温に使うことはおすすめしません。
どのぐらいお湯を入れたのかを測るために、はかりの上にサーバを置いて淹れると便利です。 私が使っているタニタのクッキングスケール KJ-212 は、コーヒーをこぼしてもカバーが洗えるし、コーヒーを淹れるために必要な最低限の機能のみを有するシンプルで、0.1g 単位で測れるので投入したコーヒー粉の量も分かるのでおすすめです。
最初はお茶を淹れる用の適当なポットを使ったり、お湯を沸かすために使った電気ケトルからそのまま淹れたりしていましたが、勢いあまってお湯がバッと入って全部が終わっちゃうやつを何度かやりました。うまく均等に注ぎたくても狙った方向に行かず、出来にムラができることもしばしばありました。
タカヒロのコーヒードリップポットは、とてもコントロールしやすいだけでなく、蓋の口が広いので、手を入れて洗浄することができて便利です。お値段はそこそこしますが、見た目も可愛くて気分が高まるのでおすすめです。
また、地味に便利なのが、蓋が落ちにくい設計になっていることです。ポットを傾けたら蓋が落ちてイライラなんてことはしょっちゅうあるかと思いますが、どんなに傾けても落ちないので本当に嬉しいです。
ステンレス製なのでサビに強く直火にかけられるのもメリットです。私はティファールで沸かしたお湯をこれに移し替えて使っていますが...。
良いミルの条件の一つとして、挽いた粉の大きさが均一で、微粉が少ないことが挙げられます。挽いた粉の大きさが均一でないと、抽出にムラが出てしまい、味の再現度が大きく落ちてしまいます。特に、微粉は抽出がすぐに終わり、後は出がらしを出すだけです。
ところでミルは主にハンドミルと電動ミルの二種類がありますが、電動ミルは 2 万円ぐらい出さないと満足できる精度で挽いてくれません。一方で、ハンドミルは 7000 円程度でそれなりに満足できる精度で挽いてくれるものがあります。
また、「電動ミルの方が自動だから楽」と思われがちですが、電動ミルの清掃やメンテナンスのコストは無視できるものではないし、場所もかなり取ってしまうので自宅で気軽に淹れるにはやや厳しいものがあります。
さて、先程「ハンドミルは 7000 円程度でそれなりに満足できる精度で挽いてくれるものがある」と書きましたが、それがタイムモア C2 です。タイムモア C2 は挽目が均一で、挽き心地が大変軽いです。
以前に使っていたカリタの 3000 円ぐらいのミル KH-9N では 20g の豆を挽くのに 5 分ぐらい掛かっていましたが、タイムモア C2 では 30 秒ぐらいで終わります。正直、最初はミルに 7000 円を出すことにかなり戸惑いましたが、毎日 5 分も掛けて豆を挽いてヘトヘトにならずに済みますし、本当にいい買い物でした。
また、タイムモア C2 の挽目の均一さは多くのブログなどでも述べられています。以下のブログではメリタの電動ミルと挽目を比較しています。
ドリッパーによって味の特徴は大きく変わります。自分の好みにあったドリッパーを使うと嬉しいです。
コーノ MDN-21 & ハリオ V60
4:6 メソッドを行う上でよく勧められるのが V60 です。V60 の特徴として、螺旋状のリブ (突起) がフィルターとの密着を防ぎ、珈琲粉を膨らみやすく、空気を抜けやすくしています。これにより、素早く抽出が行われます。また、注ぎ方によって味を調整することができます。素早く注げばすっきりした味に、ゆっくり注げば深みのある味になります (雑味も出やすくなりますが)。
コーノの名門フィルターは喫茶店でもよく使われているドリッパーで、リブ (突起) が下部のみにあるのが特徴です。リブが短いため、一度しっかりとお湯をドリッパー内に溜めてから抽出されることから、ネルドリップに近い重量のある味わいを再現してくれます。私はわりとどっしりとしたコーヒーが好きであることが分かってきたので、最近はコーノの名門フィルターにチャレンジしています。
以下のブログにて、ハリオ V60 とコーノ名門フィルターの比較がなされているので、ご紹介します。
ベースとなるお湯の注ぎ方を一つ持った上で、それらをうまく自分好みにカスタムするために、ストレスなく高い再現性でコーヒーを淹れられる道具を揃えるのがおすすめです。もし読んでくれる方がいれば今後も継続してコーヒーの話を書くかもしれないので、感想をツイートしてくれたら嬉しいです。